旅立ち2011年12月14日 00時58分

小6の女子が今日教室を旅立ちました。

まなびの森で過ごした時間を、いつか思い出すことがあれば、
また角田に来るチャンスができたときは教室を訪ねてください。
君を支えてくれる方々を大切にね。

三上先生 Yは栃木に旅立ちます。
背もぐんと伸びて、私は追い越されてしまいました。
背だけでなく、心も学びも真っ直ぐ成長しています。
先生から託されたバトンを、次はどなたに渡したらよいでしょう。
ご覧になられたら、ご教示下さい。

Rのこと2011年12月14日 10時13分

何年前になるのでしょうか。
教室に通った期間は半年弱だったので、苗字は思い出せないのですが、
彼が教室でたどった軌跡をふと思い出したので、忘れぬうちに記しておきます。

彼、Rが教室を訪ねてきたのは高校受験まで残り期間半年を切る頃でした。
面談の間もうつむたまま。自分から声を発することはなかった。
状況を尋ねると、本人ではなくお母さんから返事が有りました。
学校の実力試験の点数が思わしくないこと、私立高校には通わせられないので
なんとか公立高校に進学してほしいことなどでした。

「それじゃ、少し確かめてみようか!」と声をかけ
正負の計算、文字式の計算、方程式など 数学の出来具合を探るべく問題を作り
「できるものだけでいいから、書いてみて」と話しかけました。
動かぬ手、かすかに肩が震えたかと思いまいす。
「それじゃ、少し問題変えてみるからさ」
正の数の足し算、分数の加減乗除、小数の計算 アルファベットの小文字 などなど
ようやく少し手が動き始めました。

結論から言うと、分数はわからない 引き算は不安定、アルファベットも不安定
中学の数学は正負の計算が怪しいので以下全滅。

「お母さん、こんな状態になるまでどうして何も手を打ってこなかったんですか?」
という言葉は飲み込みました。
幸いにしてその頃には、
その言葉を飲み込むことができる程度には経験を積めていました。

彼が育った地域は小学校いや、幼稚園から中学校まで 1学年1クラス
クラス替えのないまま10年間を過ごします。
手を打ってこなかったのはお母さんではない。

「週に2回教室に通ってください。地元の公立高校に何とか間に合わせます。」
「R君を任せられる講師がいるので、引き受けましょう。」
当時、サルベージを専門的に担当する学生スタッフ Yがいて、
Rの担当はYに任せることにしました。
Yは入試で点数を重ねられそうな部分を5教科から探しながら勉強を進めました。
読める漢字、書ける漢字を増やすこと、アルファベットを正確に素早く書けること
整数の四則演算、特に繰り下がりの引き算を復習すること。
そして、二百字の作文を徹底的に練習することなどでした。

YはRの書いた作文をその都度見せに来ました。
Rの人柄に最初に注目したのはYでした。
「字は間違えるけれどRはいい文書きますよ。あいつすごくイイヤツですよ。」
Rが書く作文には誠実な人柄が溢れていて、心にストンと落ちる納得が有りました。
「Rくん!この字は違うし、ここ一ます開けてから書こうよ。
 でも中身はすごくいいよ。また次楽しみにしているから・・・」
と話しかけると、少し恥ずかしそうにモジモジしていました。

次第に表情が明るくなってきて、それと共に解ける計算問題も増えました。
模試の5教科合計点も2桁から3桁になり、地元の公立高校に進学できました。
Rの合格は、とりわけ教室のスタッフたちの喜びでした。
たった半年弱でしたが、Rの誠実で真っ直ぐな人柄 に惚れていました。

彼のことを思い出したのは、当時私が抱いた怒りを最近もまた感じたからです。

Rをあんな状態のままにして、手を打ってこなかった人たちがいる。
当時はそれが驚きと怒りでした。
おとなしくて、不満も言わないから、教室の中で見過ごされてきたのでしょう。
「この子はくり上がりの足し算と、繰り下がりの引き算が苦手です」
「九九が不安定です 」
「分数の概念が定着していません」
「まじめな子で、支持したことはコツコツと続ける忍耐力はあります。」
「毎日練習させてください」
などなど、学年から学年へ申し送りができていれば、
中3になって、母の目の前で「算数」がわからないことを暴露されることはなかった。

なぜ見過ごされたままなのだろう。

どうせ田舎の学校は定員割れしているのだから、
大して勉強しなくても高校に進学することは出来るでしょ!
そんな慢心が郡部の子供たちの「学びのチャンス」を摘みとっています。

最近、同じような言葉を
被災地の学習支援に取り組み始めた団体のボスから聞きました。
とても残念でした。そんな考えでこれから「施し」に向かうのか・・・

今日は怒りをこめて「勉強しようよ」と呼びかけます。
子どもは生まれる場所を選べないんだ!
私たちが愛情を注いで育ててきた子供たちが 、
悪意はないが、ひどい扱いを受け続ていいのか!
このまま郡部は磨り減るばかりの歯車のような「奴隷」生産地でいいのか!